「新幹線台車亀裂」巣くう組織事故

重大インシデントの内容

2017年12月11日(月)博多発東京行き、のぞみ34号(16両編成)は、4両目車両の台車(歯車箱付近)に油漏れが見つかり名古屋駅にて運転を打ち切りました。

詳細に点検したところ台車枠に亀裂が入っており移動不可能として車両撤去が完了する12月17日まで名古屋駅14番線が使用できなくなりました。これは新幹線開業以来初となる重大インシデントとなりました。

インシデントの経過

博多駅を発車してすぐに異臭と異音を乗務員等が感じ、東京指令所に向けて連絡を入れています。岡山から同乗した車両保守担当社員が床下点検する必要があると言いましたが、その時指令所はごたごたしていて点検を必要とする旨を聞き逃し運行可能かどうかだけ聞いて問題ないと判断してしまいます。

新大阪で床下点検をするのだろうと思っていた車両保守担当社員は通常通り発車していく列車に疑問を持ちながらも再度異音がすることを指令所に伝えています。

新大阪から引き継いだJR東海の乗務員も異変を感じ、名古屋駅で車両保守担当社員を待たせておくことになり事態の全貌が発覚することになります。

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止められて当たり前という指摘は的確なのか

なぜ止められなかったのかということばかりが指摘されていますが、これは間違いです。

事故やインシデントを考えるとき結果論で議論してはいけないのです。なぜなら結果が分かれば誰にだって決断できるのです。想像するに床下からの異音というのはどこから鳴っているのか見当がつかなかったのではないでしょうか。

危険度を判断するにも原因が推測できなければハッキリとした答えは出せません。ですので車両点検担当社員が運行に支障があるのか、ないのか指令所から尋ねられても煮え切らない返答になってしまったことには一定の理解が出来ます。

しかし、全体的にはコミュニケーションに問題があり、現場サイドも指令所も事故が起きることへの警戒心より円滑な運行が妨げられるかもしれないという不安の方が強かったことがうかがえます。

安全意識というぼんやりした幽霊

単純に尼崎脱線事故の教訓が生かされていないと指摘されることもあります。会社の風土というとひとくくりになってしまいますが、実際は経営側の問題、上司部下の問題、現場最前線の問題など一筋縄ではいかないことの方が多いのではないでしょうか。

確かに信楽高原鉄道列車正面衝突事故の記憶からも会社の方向性が変わっていない印象は拭えません。しかし、それを形作っているのはいい加減さや怠慢だけでは説明しきれません。大きな組織特有の動きの鈍さが見て取れます。

また公共交通機関である鉄道は24時間365日稼働しています。常に明日をこなさなければならないプレッシャーの中で立ち止まることが許されない面があります。

命がかかっているんだからそんなこと関係ないという感情論は何の役にも立ちません。ただ、それだけ組織の風土を変えるというのは難しいことなんだと理解する必要があるのです。

分社という弊害

新幹線の東京総合指令所というのは東海道、山陽、九州の各セクションが隣り合ってひとつのフロアにいます。JR東海、JR西日本、JR九州各社の司令員がお互いに顔の見えるところで働いているのです。

グループ会社なんだから境目なんて気にしないでなんてことが言えるのはグループ企業間の調整をやったことが無い人の意見です。事業の目的や経営の課題から分社した会社の内実を見ればJRに限らずぎくしゃくしていることが多いです。

中の人間から言わせれば「分けようと言ったのは会社じゃないか、上手くいかないことはわかっていたんだ」というのが本音のところでしょう。独立採算は取引している下請け会社よりもずっとグループ会社を疎遠にしかねません。現場サイドのこのような問題を経営側は分かっていないように見えます。

現場への精神論でなんとかしたい

なんとかしなければ世間からの批判をもろに受けてしまいます。

とにかく火消しをしたい経営側とそれを忖度する上司からやっつけ対策を飲むしかない現場という構図は今やどんな組織にも多かれ少なかれ見つけることが出来るでしょう。

現場は安全にコストをかけてくれと要望しますが利益に直結しない要請であり大抵却下されます。その最たるものが人件費でしょう。

現役世代の縮小で益々人不足に悩まされることになる日本の企業は人を減らしたいけど売り上げは上げたいというジレンマの中で精神論以外の解決策を見つけられないでいます。

ですが右肩上がりの成長目標という考え方が間違っているとなぜ気付かないのでしょうか。人口減少に向かっている日本にあって今まさに「どんなに無駄なことでもお金が通れば正義」という拝金主義を見直さなければならないのではないでしょうか。

建前でなく本音を採用することがその会社を救い、社会的責任も全う出来るといえるのです。

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