自分でやろうと思っている人の事情
あなたは消滅時効の援用を自分でやろうと情報を収集していてこのページにたどり着いたと思います。ほとんどのサイトでは弁護士や司法書士に依頼した方がいいという意見だと思いますがそれはごもっともです。
しかし司法書士に内容証明郵便を作成してもらうだけで3万円程かかるなどお金のないあなたにとっては不安が大きいでしょう。今回は自分で出来るかの判断をどのようにしたらいいか出来る限り考えていきたいと思います。
援用の方法より時効が完成しているかが重大
まず消滅時効の援用が個人で出来るかというとそれは出来ます。たぶんあなたはそれが1番気になっていることだと思いますが、問題はそこではありません。なぜなら時効が完成していないと援用をしたことによってさらにマズイことになりかねないからです。それを避けるために弁護士や司法書士に相談しなさいとしている情報が多いのです。
借金の時効が完成する条件
クレジットやローン等の商事債権は時効5年です。借金の種類によって5年又は10年経過すると時効が完成しますが、まずそのスタートラインとなる日を確認するのが大変です。
通常は最終弁済日の翌日からカウントされますがこの時効をリセットする「中断」という条件があります。中断に当てはまると時効はリセットされ1からカウントをし直すことになります。
時効が中断(リセット)されてしまう条件
時効が中断する事由には「債権者からの請求」と「差押え、仮差押え、仮処分」と「承認」の3種類があります。請求というのは単に毎月送られてくる請求書のことではなく債権者が請求訴訟を起こし裁判所から手紙が送られてくることです。裁判所からの手紙が来たことがないか思い出してみましょう。
もしあなたが借金から逃げるために住民票を移さずに生活していた場合は手紙の存在を知ることが出来ないためこれを確認できません。また訴訟の判決が出ている場合時効が10年になってしまいます。この判決は本人不在で出すことが出来ます。
次に差押さえや仮差押え、仮処分などは直接的に自分の銀行口座や資産に対してのアクションがあるため思い出すまでもないでしょう。ただしこれもあなたが逃げていた場合は実態がわかりませんのでもし執行されていても個人で確認することは出来ないでしょう。
最後は承認です。これが時効中断に対して1番注意しなければならないのですが、その借金が自分のものであると宣言しているかどうかです。例えば返済をする行為は1円であっても債務の承認になります。また電話等で「もう少し待ってください」とか「まだ払えません」といったやり取りをしている場合、その時から時効はカウントし直しになります。業者は必ずそういった電話を録音していますので電話していないかどうか思い出してみてください。
業者は承認を求めてあの手この手で攻撃してきます。例えば減額和解案といった内容の手紙を寄こして今電話をもらえればいくらいくらにしますと書いてあったり、単にご連絡が無く心配していますなどと内容の無い手紙を寄こしたりしてどうにか電話させようとします。
電話をしてしまうと相手はプロですから承認と取られかねない会話をみすみす録音されかねません。絶対に電話をしてはいけないのですが何しろ5年ですので記憶もあやふやになっていて実は電話で話してから5年経っていなかったとかいうこともありえます。
もし時効が完成されていなかったら
完成されていない時効を援用すると様々なデメリットがあります。例えば時効を忘れていた債権者がその事実に気付き完成される前に裁判所に訴えて時効中断を狙ってくるかもしれません。また激しい督促を開始するかもしれません。
そして時効を援用するということはその借金が自分のものであると証明するようなものですからそれ自体が債務の承認と受け止められ時効をリセットされてしまうかもしれません。住所を隠している間に裁判されていた場合などは、あなたの住所を教えることになり、自己破産まっしぐらということにもなりかねません。
稀にですがあなたが援用しようとしている借金に身に覚えがない場合というのは架空請求詐欺であることも考えられますので自分の借金でない場合は無視しましょう。どうしても確証が得られない時は弁護士などの専門家に相談します。
時効が完成していると確信できたら
ここまでの説明で自分の債権は間違いなく時効が完成していると言える人は自分で消滅時効の援用が出来ます。時効の援用は特に決まりはなく相手に伝わればいいのですがこれまでに説明した通り電話で話しをすると承認を取られることにもなりかねないので通常は内容証明郵便を使います。
内容証明郵便は郵便局がその郵便の内容を保管し、どんなものが送られたか、求められれば開示するという特殊な郵便です。これに債権者が受け取っていないと主張することを避けるため配達記録を付けます。内容証明郵便は書き方に決まりがありそれをめんどくさがって司法書士にお願いする人も多いのですが難しくはありません。
内容証明郵便を送る
同じものを3通作り、1通は債権者に送られ1通は郵便局が保管、もう1通をあなたが控えとしてもらいます。3通とも同じハンコを押されるため郵便局は内容を証明することができるのです。
縦書きの場合は1行につき20文字以内、1枚に26行までです。 「。」や「、」も1文字と数えますし、①のような文字は2文字の扱いとなります。
横書きの場合はいずれかを適用します。
1行につき20字以内、1枚に26行まで
1行につき13字以内、1枚に40行まで
1行につき26字以内、1枚に29行まで
実際に手書きで文書を作成する場合は内容証明用紙が文房具屋さんなどに売っていますのでそれを使うと書きやすいです。実際の書き方に関しては別のページで検索したり、図書館に行けば内容証明郵便の書き方という本があると思いますので調べてから作ってください。ハンコを押す位置やスペースなど細かな決まりがあります。
もしあなたがパソコンで文書を作ることに抵抗がなかったらe内容証明というサービスがあるのでそちらが便利です。サービスを利用するには無料会員登録が必要ですがデータで作れば3通作る必要が無いなどメリットが多いです。ワードで作られたひな形をダウンロードすれば郵便局が使用するハンコを押す部分もあらかじめ空白となっており、めんどくさい文字数制限もありませんのでそれに文章を打ち込めば間違いがありません。
そのデータをアップロードして郵便料金と書留料金、内容証明料金と配達証明料金を決済すれば新東京郵便局にて自動押印、自動封函して発送されます。この時あなたの認め印が押されていないことが気になるかもしれませんが債務者の印鑑は任意ですので問題ありません。
援用通知書を送った後に注意すること
通知書を送った後に悪質な業者だと返済を求める連絡をしてくる可能性があります。これは当然債務の承認を求めて行われるのですがもしこのとき少しでも承認をほのめかしたり、少額の返済をしてしまったりすると中断どころかもっと最悪な事態になってしまいます。時効が完成されてから返済の意思を示すと時効を放棄して返済を選択したとみなされて時効援用することが裁判所に認められなくなってしまいます。
ですから通知書を送った後に業者と連絡をとることはやめてください。万がいち時効の中断を証明する証拠がある場合は恐らく内容証明郵便で送り返してくると思われますので、そうなった時にはあきらめて専門家に相談してください。
横書きの通知書文例
平成○○年○月○日(右端)
消滅時効援用通知書(中央)
(左端)東京都〇〇区〇〇 〇〇ビル〇階
(左端)〇〇債権回収株式会社 代表取締役 〇〇〇〇殿
〇〇県〇〇市〇〇 あなたの名前 印(右端)
前略 貴社から平成○○年○月○日付催告書による平成○年○月○日付金銭消費貸借契約の借入金とその利息及び同借入金に対する遅延損害金についてのご請求を頂きました。
しかし、本貸金債権は最終弁済日の翌日から5年以上経過しており、消滅時効が完成されております。
よって本書面をもって消滅時効援用の意思表示を致します。
契約番号:〇〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
生年月日:昭和〇〇年〇月〇日
最終弁済日:平成○年○月○日
貴社におかれましては、本書面を受領後速やかに信用情報機関宛てに適切な通知をして登録された事故情報を抹消されますよう、併せてお願い申し上げます。
なお、本通知書は貴社に対する債務を承認するものではありませんので念のため申し添えます。
草々(右端)
通知書文の注意点
どの債権に対しての通知書なのかがわからなければ意味がありません。契約番号や当初借入日及び借入金額等がわかればいいのですがもし分からない場合もしくは不正確な場合は氏名(ふりがなも)住所(借入れ時に記入したもの)生年月日がわかれば特定できると思います。わかる範囲で書き込みましょう。
また最終弁済日がわからない場合は「期限の利益を喪失してから」という言い回しでもOKです。実際法律上の難しい決まりよりも「時効援用の意思表示」が1番大事な文章です。「時効が完成されている」ことと「時効援用の意思表示」を伝えるために作っているのです。
あとはあなたが誰でいつ(時効が完成した後の日付であることが重要)送られたものなのかがわかればいいのです。1番下に書かれている信用情報機関に対してのことや債務の承認についてはあなたが書きたければ書けばよいといった程度のものに過ぎません。そもそも債権回収会社は信用情報機関に加盟していないのでこの文章は元の債権者向けに援用する場合の例です。
自分でやると決めた人に
時効援用の成功を心からお祈りいたします。
またこのページの情報で行われた時効援用について発生した損害等については責任を負いかねますので自己責任でお願いします。少しでも不安がある場合は弁護士や司法書士に相談しましょう。
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